クリーニングから戻ってきた大切な衣類、仕上げにかけられたビニール袋をそのままにしてクローゼットに保管していませんか。実は、多くの方がやりがちなその習慣が、衣類を傷めてしまう原因になります。
多くの方が悩むクリーニング後の保管方法ですが、ビニールを袋に入れたままにするのは避けるべきです。正しいケアのためには、クリーニング後の陰干しにかける時間や、不織布カバーの選び方など、いくつかのポイントを押さえる必要があります。また、クリーニングのカバーが片面不織布ならどうなのか、保管に使うクリーニング袋は100均のもので代用できるのか、といった細かい疑問も生じやすいでしょう。
この記事では、このような疑問をすべて解消し、お気に入りの衣類を次のシーズンも美しい状態で着るための知識を分かりやすく解説していきます。
- クリーニングの袋を付けたままにするデメリット
- 袋から出した後の正しい衣類の保管手順
- 不織布カバーやハンガーなど保管グッズの選び方
- 大切な衣類を長持ちさせるクローゼットの環境作り
なぜクリーニングした衣類を袋から出すのが大切なのか?
- ビニール袋に入れたまま保管するリスク
- 湿気がこもりカビや不快な臭いの原因に
- 化学反応による衣類の変色や黄ばみ
- 片面が不織布のカバーならそのままでもOK?
ビニール袋に入れたまま保管するリスク

結論から言うと、クリーニングから戻ってきた衣類をビニール袋に入れたまま保管するのは避けるべきです。多くの方がホコリよけになると考えてしまいがちですが、実は様々なトラブルを引き起こす原因となります。
その理由は、クリーニング店でかけられるビニール袋が、あくまで店舗からご自宅まで運ぶ間の汚れやホコリを防ぐための一時的なものだからです。長期間の保管を想定して作られていないため、そのままにしておくと衣類に悪影響を及ぼす可能性が高まります。
袋に入れたままにする主なリスク
ビニール袋をかけたまま長期間保管すると、以下のような問題が発生しやすくなります。
- 湿気によるカビや臭いの発生
- 化学物質による変色や黄ばみ
- 虫食いの被害
- 生地の劣化や風合いの変化
せっかくきれいにした衣類を台無しにしないためにも、クリーニング後はすぐに袋から出す習慣をつけましょう。
湿気がこもりカビや不快な臭いの原因に

ビニール袋をかけたままにする最大の問題点は、湿気がこもりやすいことです。ビニールは通気性がほとんどないため、一度入った湿気は外に逃げることができません。
クリーニングの工程では高温で乾燥させますが、ごくわずかな水分が繊維に残っている場合があります。また、外気との温度差で袋の内側に結露が発生することもあります。これらの水分が袋の中に閉じ込められると、カビが繁殖するのに最適な高湿度の環境が作られてしまうのです。
カビは、以下の3つの条件が揃うと発生しやすくなります。
カビが発生する3つの条件
- 湿度:湿度が高い場所を好みます(一般的に70%以上)。
- 温度:20℃~30℃が最も活動しやすい温度です。
- 栄養源:衣類に残ったわずかな皮脂汚れや、繊維そのものが栄養になります。
ビニール袋の中は、まさにこの条件が揃いやすい場所と言えます。カビが発生すると、生地にシミを作ったり、アレルギーの原因になったり、不快な臭いを放ったりと、良いことは一つもありません。
また、湿気はカビだけでなく雑菌の繁殖も促します。雑菌が出す代謝物が、生乾きのような嫌な臭いの原因にもなるため注意が必要です。
化学反応による衣類の変色や黄ばみ

目に見えない化学物質も、ビニール袋の中で衣類に悪影響を与える可能性があります。特に、オフシーズンの衣類を長期間保管する際には注意しなくてはなりません。
一つは、ドライクリーニングで使用された石油系溶剤がごく微量に残留しているケースです。この残留溶剤がビニール袋の中で気化し、空気中のガスなどと化学反応を起こすことで、衣類の色素を変化させ、変色や色あせを引き起こすことがあります。
もう一つ、より注意したいのが、ビニール袋自体に含まれる化学物質の影響です。例えば、ビニール袋の原料を安定させるために添加される「BHT(ブチルヒドロキシトルエン)」という酸化防止剤があります。このBHTが衣類に付着し、石油ストーブやガスファンヒーターなどから発生する窒素酸化物(NOxガス)と反応すると、衣類が黄色く変色してしまうことがあるのです。これは「BHT黄変」と呼ばれ、特に白いシャツやブラウスなどで起こりやすい現象です。

「クローゼットに白いシャツを保管していたら、翌年黄ばんでいた…」という経験はありませんか?もしかしたら、ビニール袋をかけたままにしていたことが原因かもしれません。
片面が不織布のカバーならそのままでもOK?

クリーニング店によっては、片面がビニールで、もう片面が不織布になっているカバーをかけてくれることがあります。不織布は通気性があるため、「これなら大丈夫だろう」と思う方もいるかもしれません。
確かに、全体がビニールで覆われている袋に比べれば、通気性は格段に良く、湿気がこもるリスクは低減します。そのため、数週間程度の短期的な保管であれば、大きな問題にはなりにくいでしょう。
ただ、理想を言えば、やはり外すことをおすすめします。その理由は以下の通りです。
片面不織布カバーでも注意したい点
化学反応のリスクは残る
前述の通り、ビニールの面が衣類に直接触れていると、ビニールに含まれる化学物質が移行し、変色などを引き起こす可能性はゼロではありません。
通気性が万全ではない
両面が不織布のカバーに比べると、どうしても通気性は劣ります。クローゼットの環境によっては、湿気が溜まってしまうことも考えられます。
特に、カシミヤのコートやフォーマルウェアなど、大切な衣類をシーズンオフで半年以上保管する場合は、より通気性の良い両面不織布の専用カバーに入れ替えるのが安心です。
クリーニング後は袋から出す!衣類ケアの基本
- クリーニング後の正しい保管方法を知ろう
- 陰干しにかける時間の目安はどのくらい?
- 保管には通気性の良い不織布カバーが最適
- 保管用の衣類カバーは100均でも大丈夫?
- 衣類に合ったハンガーで型崩れを防ぐ
- クローゼット内の湿気と防虫対策も忘れずに
- まとめ:クリーニング後は袋から出すのが鉄則
クリーニング後の正しい保管方法を知ろう

クリーニング後の衣類を良い状態で保管するためには、いくつかのステップを踏むことが大切です。袋から出すだけでなく、その後のひと手間が衣類の寿命を大きく左右します。
ここでは、基本となる5つのステップをご紹介します。この手順を習慣にすることで、次のシーズンも気持ちよくお気に入りの服に袖を通せるようになります。
クリーニング後の保管 5つの基本ステップ
- すぐに袋から出す: クリーニング後は、まずビニール袋やカバーを外します。
- 仕上がりをチェックする: シミや汚れが落ちているか、ボタンの破損や紛失がないかを確認します。何か問題があれば、すぐに店舗に連絡しましょう。
- 陰干しで湿気を飛ばす: 風通しの良い日陰で数時間~半日ほど干し、残っている湿気や溶剤の臭いを飛ばします。
- ハンガーを交換する: クリーニング店の針金ハンガーは型崩れの原因になるため、衣類に合った厚みのあるハンガーに交換します。
- 不織布カバーをかける: ホコリや光から守るため、通気性の良い不織布製のカバーをかけて保管します。
これらのステップは、どれも難しいものではありません。大切な衣類を長く愛用するために、ぜひ実践してみてください。
陰干しにかける時間の目安はどのくらい?

クリーニング後の衣類は、保管前に一度「陰干し」をすることが非常に重要です。陰干しには、残っている可能性のある溶剤の成分を揮発させる目的と、輸送中などに含んだ湿気を取り除く目的があります。
時間の目安としては、最低でも数時間、できれば半日程度が理想です。特にダウンジャケットや厚手のウールコートなどは湿気を含みやすいため、念入りに風を通しましょう。
陰干しのポイント
場所:直射日光や室内の蛍光灯の光が直接当たらない、風通しの良い場所を選びます。紫外線は色あせや生地を傷める原因になります。
方法:ハンガーにかけ、他の衣類と間隔をあけて吊るします。室内の場合は、窓を開けて空気を循環させたり、扇風機やサーキュレーターで弱い風を当てたりするのも効果的です。

「クリーニング特有の油っぽい臭いが少し気になる…」と感じたときは、この陰干しをしっかり行うことで、臭いが軽減されますよ。
保管には通気性の良い不織布カバーが最適

陰干しが終わった衣類は、そのままクローゼットにしまうのではなく、保管用のカバーをかけるのがおすすめです。ただし、ここで再びビニール袋をかけるのはNGです。保管用には、通気性に優れた不織布(ふしょくふ)製のカバーを選びましょう。
不織布カバーには、以下のようなメリットがあります。
- 優れた通気性:湿気がこもりにくく、カビの発生を効果的に防ぎます。
- ホコリよけ効果:シーズンオフで長期間保管する衣類を、ホコリの付着からしっかり守ります。
- 光からの保護:製品によってはUVカット加工が施されており、照明による色あせを防ぐ効果も期待できます。
大切なスーツやフォーマルウェア、デリケートな素材の衣類には、不織布カバーの使用を強く推奨します。衣類を購入した際に付いてくるガーメントバッグなども、通気性のある素材であれば活用できます。
保管用の衣類カバーは100均でも大丈夫?

「保管用のカバーは欲しいけれど、あまりコストはかけたくない」という場合、100円ショップの製品は魅力的に映るかもしれません。結論として、用途や期間を限定すれば活用できますが、大切な衣類の長期保管にはあまりおすすめできません。
100円ショップのカバーと、アパレル用品メーカーなどが販売する専門のカバーには、以下のような違いがあります。
比較項目 | 100円ショップのカバー | 専門メーカーのカバー |
---|---|---|
価格 | 非常に安価 | 比較的高価 |
素材・通気性 | 生地が薄く、通気性が劣る場合がある | 厚手でしっかりしており、通気性が高い |
耐久性 | 比較的低い | 高い |
付加機能 | ほぼ無い | 防虫・防カビ・UVカットなど多彩 |
おすすめ用途 | シーズン中の短期的なホコリよけ | 大切な衣類の長期保管(シーズンオフ) |
このように、価格が安い分、機能性や耐久性には差があります。例えば、シーズン中によく着るジャケットのホコリよけとして使う分には問題ありません。しかし、カシミヤやシルクといった高級素材の衣類を半年以上保管する場合は、品質の確かな専門メーカーのカバーを選ぶのが賢明です。
衣類に合ったハンガーで型崩れを防ぐ

衣類の美しいシルエットを保つためには、ハンガー選びが非常に重要です。クリーニング店から返却される際に付いてくる針金ハンガーは、細すぎて衣類の重さを点で支えるため、長期間使用すると肩に変な跡がついたり、型崩れしたりする原因になります。
保管の際は、必ず衣類の種類や素材に合ったハンガーに交換しましょう。
衣類別・おすすめハンガーの種類
- スーツ・ジャケット・コート:肩のラインに合った厚みのある木製ハンガーやプラスチック製ハンガー。肩幅と同じくらいの幅のものを選びます。
- シャツ・ブラウス 肩先に丸みのある、適度な厚みのハンガー。滑りやすい素材のものは、起毛タイプや滑り止め加工がされたものがおすすめです。
- ニット・セーター ハンガーにかけると自重で伸びてしまうため、基本的には畳んで保管するのがベストです。もし吊るす場合は、肩への負担が少ないアーチ状の滑りにくいハンガーを選びましょう。
- スラックス・スカート クリップで挟むタイプや、バーにかける専用ハンガーを使用すると、シワにならず綺麗に保管できます。
少しの手間と投資で、衣類の寿命は大きく変わります。お気に入りの服の形をきれいに保つためにも、ぜひハンガーを見直してみてください。
クローゼット内の湿気と防虫対策も忘れずに

衣類一つひとつのケアを完璧に行っても、収納場所であるクローゼットの環境が悪ければ意味がありません。衣類をトラブルから守るためには、保管環境を整えることが最後の仕上げとなります。
特に重要なのが「湿気対策」と「防虫対策」です。
湿気対策
クローゼットは空気がこもりやすく、湿気が溜まりやすい場所です。以下の方法で、湿度をコントロールしましょう。
- 除湿剤を置く:置き型や吊り下げタイプの除湿剤を設置し、定期的に交換します。
- 定期的に換気する:天気の良い日にはクローゼットの扉を開け、空気を入れ替えます。
- 衣類を詰め込みすぎない:収納量は全体の7〜8割程度に抑え、衣類と衣類の間に空気が通る隙間を作ることが理想です。
防虫対策
ウールやカシミヤなどの動物性繊維は、衣類害虫の大好物です。大切な衣類を虫食いから守るために、防虫剤を正しく使用しましょう。
防虫剤の正しい使い方
- 衣類の上に置く:防虫成分は空気より重く、上から下へ広がる性質があるため、衣類の上に置くのが最も効果的です。
- 使用量を守る:製品に記載された使用量を守りましょう。多すぎても効果は変わらず、衣類に臭いがつく原因になります。
- 種類の違うものを混ぜない:特に「パラジクロルベンゼン」「ナフタリン」「樟脳」は、混ぜて使うと化学反応で溶けて衣類にシミを作ることがあるため、絶対に併用しないでください。無臭のピレスロイド系は他のものと併用できますが、念のため注意書きを確認しましょう。
- 有効期限を確認する:効果には期限があります。「おわり」のサインが出たら、速やかに交換してください。
防虫剤の基礎知識については、「全国クリーニング生活衛生同業組合連合会」のサイトに詳しい解説がありますので、気になる方はこちらも参考にしてください。
〉全国クリーニング生活衛生同業組合連合会:衣類を守るための防虫剤の基礎知識
まとめ:クリーニング後は袋から出すのが鉄則
今回は、クリーニング後の衣類の正しい保管方法について解説しました。大切な衣類をカビや変色、虫食いなどのトラブルから守り、長く愛用するためには、日頃のちょっとした心がけが重要です。最後に、この記事の要点をリストでまとめます。
- クリーニングのビニール袋は運搬用で長期保管には向かない
- 袋に入れたままだと湿気がこもりカビや臭いの原因になる
- 化学物質が反応して衣類が変色・黄ばむリスクがある
- 虫が好む環境を作ってしまい虫食いの被害に遭いやすくなる
- 帰宅したらまずビニール袋から衣類を取り出す
- シミや破損がないか仕上がりを必ずチェックする
- 風通しの良い日陰で数時間から半日ほど陰干しする
- 針金ハンガーは型崩れの原因になるため使用を避ける
- 衣類の形に合った厚みのあるハンガーに交換する
- 保管には通気性の良い不織布製のカバーが最適
- 片面不織布のカバーも長期保管なら外すのが望ましい
- 100均のカバーは短期的なホコリよけと割り切って使う
- クローゼットは衣類を詰め込みすぎず7〜8割収納を心がける
- 除湿剤や定期的な換気でクローゼットの湿気対策を行う
- 防虫剤を正しく使い大切な衣類を虫食いから守る