「モンゴルに行くなら、絶対にカシミヤを買ったほうがいい」という話を聞いたことはありませんか?
その噂、本当なんです。モンゴルは世界でもトップクラスのカシミヤ生産国であり、日本では考えられないような値段で、最高品質のニットやマフラーを手に入れることができます。
しかし、いざ現地に行ってみると「どのブランドがいいの?」「市場で売っている安いものは本物?」「工場見学はできる?」といった疑問が次々と湧いてくるかもしれません。
せっかくの旅行ですから、偽物を掴まされたり、買い物の場所選びで失敗したりするのは避けたいですよね。
この記事では、モンゴルでお土産にカシミヤを買う際に気になる疑問を徹底解説します。お土産で後悔しないためのヒントになれば幸いです。
- モンゴルを代表するカシミヤブランドの特徴と選び方
- 現地での具体的な購入価格の相場と予算の目安
- 偽物に騙されないための見分け方と市場での注意点
- 免税手続きの方法や工場直営店ならではのメリット
モンゴルでお土産のカシミヤを選ぶための基礎知識
モンゴルのカシミヤ製品は、その品質の高さと驚きの価格設定で、世界中の旅行者を魅了しています。しかし、ひとくちに「モンゴルカシミヤ」といっても、ブランドや製品によって特徴はさまざまです。
まずは、失敗しないお土産選びのために知っておくべき、基礎的な情報を整理しておきましょう。
おすすめの有名ブランドと特徴

モンゴル国内には数多くのカシミヤメーカーが存在しますが、観光客が安心してお土産を購入するなら、歴史と実績のある信頼できる大手ブランドを選ぶのが鉄則です。
特に有名なのが「GOBI(ゴビ)」と「GOYO(ゴヨ)」、そして「EVSEG(エブセグ)」の3社です。それぞれのブランドには明確な特徴とターゲット層の違いがあります。
まず、GOBI Cashmere(ゴビカシミヤ)は、1981年に設立されたモンゴル最大級のメーカーであり、世界的な知名度を誇ります。
かつては国営企業だったこともあり、原毛の調達から紡績、製品化までを一貫して行う垂直統合型の生産体制を持っています。世界銀行のデータによると、モンゴルは世界のカシミヤ供給量の約40%を占める第2位の生産国ですが、その多くをGOBIのような大手企業が牽引しています。(出典:世界銀行グループIFC『牧草地から工場まで~モンゴルでグリーンなカシミヤ生産を実現する』)
この背景から、品質の安定感と圧倒的な品揃えが魅力で、「とりあえずGOBIに行けば間違いない」と言われるほどの安心感があります。特に、無染色のオーガニックラインは、カシミヤ本来の風合いを楽しめると評判です。
次に、GOYO Cashmere(ゴヨカシミヤ)は、よりファッショナブルで都会的なデザインを志向するブランドです。パリやロンドンなどの海外市場を意識した洗練されたカッティングや、鮮やかな色使いが特徴です。
現在はGOBIグループと経営統合されていますが、ブランドとしてのアイデンティティは維持されており、伝統的なデザインよりもトレンド感を重視する若い世代や、ファッション感度の高い旅行者に支持されています。
そして、EVSEG Cashmere(エブセグカシミヤ)は、工場見学とショッピングを同時に楽しめる店舗作りが特徴です。ウランバートル市内にある広大な店舗は観光客向けのサービスが充実しており、落ち着いた雰囲気の中で買い物ができます。
素材へのこだわりも強く、カシミヤだけでなく、ヤクやキャメル(ラクダ)製品も豊富に取り扱っているため、少し変わった素材を探している方にもおすすめです。
その他の注目ブランド
近年では「Altai Cashmere(アルタイカシミヤ)」や「Khanbogd Cashmere(ハンボグドカシミヤ)」なども、品質と価格のバランスが良い中堅ブランドとして人気が出てきています。
GOBIやEVSEGを見た後に、時間があれば立ち寄ってみると、掘り出し物が見つかるかもしれません。
現地での値段や購入予算の相場
モンゴル現地でカシミヤを購入する最大のメリットは、なんといってもその劇的な安さです。一般的に、日本や欧米の百貨店で購入する価格と比較して「3分の1から半額程度」で購入できると考えて良いでしょう。
これは、原産国であるために輸送費や関税がかからないため、そしてメーカーが直接販売することで中間マージンが排除されているためです。
具体的な予算の目安として、以下のような詳細な相場観を持っておくと、現地での買い物が非常にスムーズになります。為替レートの変動はありますが、お得感は常に高い水準を維持しています。
| アイテムカテゴリ | 現地価格目安 (USD) | 日本円換算目安 | 特徴・用途 |
|---|---|---|---|
| 靴下 | $10 – $35 | 約1,500円 – 5,200円 | ばら撒き土産の定番。就寝用や極厚の防寒用など種類が豊富。 |
| 手袋・帽子 | $20 – $60 | 約3,000円 – 9,000円 | 指なしタイプやスマホ対応手袋も人気。セットで買うと喜ばれる。 |
| マフラー | $40 – $100 | 約6,000円 – 15,000円 | サイズと織りの密度により価格が変動。最も汎用性が高い。 |
| 大判ストール | $60 – $150 | 約9,000円 – 22,500円 | ブランケット代わりにもなるサイズ感。飛行機内でも重宝する。 |
| セーター | $80 – $150 | 約12,000円 – 22,500円 | ベーシックなデザイン。日本なら3〜5万円クラスの品質。 |
| デザインニット | $150 – $300 | 約22,500円 – 45,000円 | 厚手のケーブル編みや、プレミアムライン(YAMA等)。 |
| コート (100%) | $400 – $1,000+ | 約60,000円〜 | 一生モノの投資。日本国内ブランドなら数十万円レベル。 |
日本国内でカシミヤ100%のセーターを購入しようとすれば、セール時期でも3万円を下回ることは稀ですが、モンゴルではGOBIのようなトップブランドの正規品でも1万円台後半から購入可能です。
予算計画としては、免税手続きが可能になる一回あたりの購入金額「50万トゥグルグ(約2.5万円前後)」を一つの目安にすると良いでしょう。セーター1着にマフラーや手袋などの小物を組み合わせれば十分に到達する金額であり、賢く買い物ができます。
偽物の見分け方

非常に残念なことですが、モンゴル国内であっても、観光客が多く訪れる市場(ザハ)や非正規の露店では、偽物のカシミヤ製品が大量に出回っています。特に注意が必要なのが、「100% Pashmina(パシュミナ)」や「100% Cashmere」というタグが付けられているにもかかわらず、日本円で数千円程度で売られているストールです。
これらは多くの場合、ビスコース(レーヨン)やアクリル、あるいは低品質なウールとの混紡です。本物のカシミヤを見分けるために、現地でできるチェックポイントをいくつか紹介します。
1. 触感
本物のカシミヤは、指先で触れた瞬間に独特の「ぬめり感」と、しっとりと肌に吸い付くような「温かみ」を感じます。
一方で、偽物は化学処理による不自然なツルツル感があったり、逆にチクチクしたりすることがあります。首元などの敏感な部分に当ててみて、違和感がないか確認してください。
2. 重量感
カシミヤの繊維は非常に細く、空気を多く含むため、見た目のボリュームに対して驚くほど軽いのが特徴です。
手に持った時にずっしりと重みを感じる場合、それは太いウールや綿、化学繊維が混ざっている可能性が高い証拠です。
3. 燃焼テストの知識
購入前の商品で行うことはできませんが、カシミヤ(動物の毛)は燃やすと「髪の毛が燃えるようなタンパク質の臭い」がし、燃えカスは黒く脆い灰になって指で粉砕できます。一方、化学繊維は「プラスチックが燃えるような臭い」がし、燃えカスは硬い玉になって溶けるように燃えます。
市場の売り子がライターで糸くずを燃やして見せるパフォーマンスをすることがありますが、詐欺の手口も巧妙化しているため、過信は禁物です。
「パシュミナ」の罠
モンゴルのお土産屋さんで「これはパシュミナだから高級だ」と言われることがありますが、本来パシュミナはカシミヤの一種であり、モンゴルでは一般的に「カシミヤ」という呼称が使われます。
安価な「パシュミナ」表記の商品は、ほぼ間違いなく化学繊維の偽物と考えて避けるのが無難です。
マフラーやストールの選び方
お土産として最も人気が高く、失敗が少ないのがマフラーやストールです。サイズ選びの心配が少なく、老若男女問わず喜ばれるアイテムですが、種類が多すぎて迷ってしまうこともあります。選ぶ際のポイントは、「厚み」と「用途」を明確にすることです。
まず、モンゴルのカシミヤは繊維が細く長いため、薄手の製品でも十分な保温性があります。薄手の大判ストールは「ガーゼストール」のように軽く、春先や秋口の羽織りものとして、また夏の冷房対策として一年中重宝します。小さく畳んでバッグに入れてもかさばらないため、旅行好きの方へのギフトにも最適です。
一方、真冬の防寒具として選ぶなら、厚手のリブ編みや、フェルト加工されたマフラーがおすすめです。しっかりと目が詰まったカシミヤは風を通さず、氷点下の環境でも首元を温めてくれます。
色は、染色していない「オーガニックカラー(白、ベージュ、ウォームグレー、ブラウン)」が特におすすめです。染料によるダメージを受けていないため、カシミヤ本来の柔らかさが最も活かされており、どんな服装にも合わせやすい自然な色合いが魅力です。
カシミヤは非常にデリケートな素材です。購入後、長く愛用するためには、着用後のブラッシングなどのケアが欠かせません。適切なお手入れをすることで、毛玉を防ぎ、独特の光沢を保つことができます。
カシミヤのお手入れには、素材を傷めない適切なブラシ選びが重要です。以下の記事で、カシミヤに適したブラシの種類や推奨されないものについて詳しく解説しています。
セーターや靴下などの人気商品
自分用のお土産として、あるいは大切な家族へのプレゼントとして絶対におすすめしたいのが、カシミヤ100%のセーターです。モンゴルの冬はマイナス40度にもなる極寒であり、その環境で育った山羊の毛は保温性が抜群です。
ユニクロのカシミヤも素晴らしいですが、モンゴル現地のトップブランド製品は、より肉厚でふっくらとした質感を感じられるものが多いです。
セーターを選ぶ際は、シンプルなクルーネックやタートルネックなどの定番デザインを選ぶと、流行に左右されず長く着られます。特に「GOBI Organic」ラインのような無染色製品は、着心地が別格です。
また、少し変わったデザインが欲しい場合は、プレミアムラインの「YAMA」などをチェックしてみると、イタリアンデザインを取り入れたモダンなニットが見つかります。
そして、隠れた名品として大人気なのが「カシミヤの靴下」です。一足1,500円〜2,000円程度とお手頃で、バラマキ用のお土産にも最適です。履いた瞬間から足元がポカポカと温まり、冷え性の方には手放せないアイテムになります。
ただし、カシミヤ100%の靴下は摩擦に弱く穴が開きやすいため、ナイロンなどが混紡された耐久性の高いタイプを選ぶか、就寝用(ベッドソックス)として使うのがおすすめです。
もし購入したカシミヤなどの高級ニットを、うっかり洗濯機で洗って縮ませてしまった場合は、以下の記事が参考になります。ウール製品の対処法ですが、カシミヤにも応用できる復元の知恵が含まれています。
メンズやレディースのサイズ感
衣類を購入する際に最も注意したいのがサイズ感です。モンゴルのカシミヤブランドは、欧米向けの輸出を主力としているため、サイズ表記が日本よりも少し大きめに作られている傾向があります。
具体的には、普段日本で「Lサイズ」を着ている方が、モンゴル製品では「Mサイズ」でちょうど良い、というケースが多々あります。特に袖丈と着丈が長めに設定されていることが多く、小柄な日本人女性の場合、Sサイズでも袖が余ってしまうことがあります。
試着のポイント
メンズのコートやジャケットを購入する場合は、袖詰めのお直しが必要になる可能性も考慮しておきましょう。帰国後にお直し専門店に依頼するコストも含めて検討することが大切です。
モンゴルでお土産のカシミヤを購入できる店舗と注意点
「どこで買うか」は、「何を買うか」と同じくらい重要です。
ウランバートル市内にはいくつかの主要な購入スポットがありますが、品揃え、価格、アクセスの利便性はそれぞれ異なります。
限られた旅行時間を有効に使い、満足度の高い買い物をするための情報をまとめました。
ウランバートルの工場直営店

カシミヤ購入の最適解として最もおすすめなのが、各ブランドの「工場直営店(ファクトリーストア)」です。GOBIやEVSEGなどの工場敷地内には巨大な店舗が併設されており、最新コレクションからアウトレット品まで、市内の百貨店とは比較にならないほどの圧倒的な在庫量を保有しています。
特にGOBI Factory Storeは世界最大級のカシミヤ専門店とも言われ、店内を見て回るだけでも1時間以上かかるほどの広さです。ここに行けば、欲しい色、サイズ、デザインが見つからないということはまずありません。
また、GOBIファクトリーストアには「アウトレットコーナー」が常設されています。ここでは、昨シーズンのモデルや、サイズが欠けている商品、わずかな織りムラがあるB級品などが、定価の30%〜50%オフで販売されています。自分用であれば全く気にならないレベルのものが多いため、こうした掘り出し物を探すのも工場直営店ならではの楽しみです。
EVSEG Factory Storeでは、店内のガラス窓から製造ラインを直接見学できるエリアがあり、実際に原毛が糸になり、製品として編み上げられていく工程を見ることで、品質への信頼感がより高まります。
これらの直営店は市内中心部(スフバートル広場周辺)から車で15分〜20分程度の距離にあります。公共交通機関でのアクセスは難易度が高いため、タクシー配車アプリ(UBCabなど)を利用するか、ホテルでタクシーを呼んでもらうのが一般的です。多くの観光客が訪れる定番スポットなので、運転手に行き先を告げればすぐに伝わります。
ノミンデパートなどの大型百貨店
旅行の日程が短く時間が限られている場合や、GOBI、GOYO、Altaiなど複数のブランドを一度に比較検討したい場合は、市内中心部にある「ノミンデパート」が便利です。ウランバートルのランドマーク的存在であり、お土産フロア(通常は5階または6階)には、主要なカシミヤブランドがブースを構えて集結しています。
工場直営店に比べると各ブランドの売り場面積は狭く、サイズや色の在庫は限られていますが、主要な人気商品は網羅されています。また、同じフロアにフェルト製品、革製品、チョコレート、民族衣装なども売られているため、モンゴルのお土産全般をワンストップで揃えられる効率の良さが魅力です。
また、スフバートル広場に隣接する高級モール「Galleria Ulaanbaatar(ガレリア・ウランバートル)」には、GOBIの大型旗艦店が入居しています。こちらは内装が豪華で、富裕層や外国人観光客向けの快適なショッピング環境が整っています。工場まで行く時間はないけれど、デパートよりも豊富な品揃えを見たいという方に最適です。
空港の免税店での品揃え
帰国直前に、チンギス・ハーン国際空港(新ウランバートル国際空港)の免税店で購入することも可能です。保安検査場を通過した後の出発エリアに、主要ブランドのショップがあります。
ただし、市内の直営店やデパートに比べると、品揃えやサイズ展開はかなり限定的になります。特に人気のある色やサイズは売り切れていることも多く、価格も市内より割高に設定されている場合があります。
「買い忘れたものを最後に足す」程度に考えておき、メインの買い物は市内で済ませておくのが無難です。また、空港での支払いは米ドルやクレジットカードがメインとなりますが、余ったトゥグルグを使い切りたい場合にも利用できます。
市場での購入リスクと注意点
現地のローカルな雰囲気を味わえる「ナラントゥール市場(通称:ブラックマーケット)」は観光スポットとして人気ですが、ことカシミヤ製品の購入に関してはおすすめできません。
市場で「カシミヤ100%」として山積みされている靴下やストールの多くは、実際には化学繊維であったり、品質の低い混紡素材であったりするリスクが極めて高いです。価格は非常に安いですが、品質保証は一切ありません。また、市場は非常に混雑しており、外国人観光客を狙ったスリも多発しています。
市場では、デール(民族衣装)の生地、革製の乗馬ブーツ、馬具、フェルト雑貨などを楽しみ、高価なカシミヤに関しては信頼できる正規専門店で購入することを強く推奨します。
「安物買いの銭失い」にならないよう、場所による使い分けが重要です。
免税手続き
モンゴルでは、外国人観光客向けのVAT(付加価値税)還付制度(Tax Refund)が運用されています。対象店舗で一回の会計につき50万トゥグルグ(約2.5万円前後)以上の買い物をした場合、空港で手続きをすることで税金の一部が戻ってきます。
高額になりがちなカシミヤの買い物では、この制度を利用しない手はありません。
免税手続きのステップ
- 店舗で: 会計時にパスポートを提示し、「タックスフリー(Tax Free)」のレシート発行を依頼します。
- アプリ登録: モンゴル国税庁のアプリ「eBarimt」をダウンロードし、レシートのQRコードを読み込んで登録する必要があります。SMS認証が必要な場合があるため、現地で通信可能なスマホの準備が必要です。
- 空港で: 出発ロビーにある税関カウンターまたは専用キオスク端末で、購入商品とパスポート、登録データを提示し、還付手続きを行います。商品は「未開封・未使用」が原則ですので、手荷物として預け入れる前に手続きを行うよう注意してください。
まとめ:モンゴルのお土産はカシミヤが最適!

モンゴルのカシミヤは、その品質の高さ、豊富なデザイン、そして何よりも現地ならではの手頃な価格で、間違いなく「買ってよかった」と心から思えるお土産になります。厳しい自然環境が生んだ「繊維の宝石」は、帰国してからも長く旅の思い出を温めてくれるはずです。
自分へのご褒美としての一生モノのコートから、友人への気軽な靴下まで、予算と用途に合わせて選べるのも魅力です。ぜひ、この記事を参考に、信頼できるブランドと店舗を選び、最高のカシミヤ製品を見つけてください。
カシミヤなどの高級素材を購入する場合、長期的なケアも重要です。以下の記事では、一生モノのコートの選び方や、虫食いなどのダメージから衣類を守るための知識を紹介しています。
正しい知識を持って選べば、モンゴルでのカシミヤショッピングは、きっとあなたの旅のハイライトになることでしょう。



