ノンブランドのカシミヤコート｜買取の現実と相場！高く売るコツ

「カシミヤ100%だから、ノンブランドでも高く売れるはず」

クローゼットの奥から出てきたカシミヤのコートを眺めながら、そんなふうに思っていませんか。

実は、私も以前はそう信じて疑いませんでした。カシミヤといえば「繊維の宝石」とも呼ばれる高級素材です。新品で買ったときは数万円、もしかしたら十万円近くしたかもしれません。だからこそ、手放すときもそれなりの金額で買い取ってもらえると期待するのは、とても自然なことだと思います。

しかし、実際にリサイクルショップに持ち込んだり、宅配買取を利用したりしてみると、その期待は大きく裏切られることがほとんどです。特にブランドタグが付いていない「ノンブランド品」に関しては、素材がいかに良くても、中古市場での評価は驚くほど厳しいのが現実です。

古いデザインのコートや、裏地に名前の刺繍が入っているコートは売れるのか？ ユニクロなどファストファッションはどう扱われるのか？ こうした疑問をお持ちの方も多いでしょう。

この記事では、ノンブランドのカシミヤコートの買取に関する調査結果を包み隠さずお伝えします。そして、ただ安く買い叩かれるだけでなく、少しでも損をしないための「賢い処分方法」や「意外な活用術」について、具体的なステップとともに解説していきます。

ノンブランドのカシミヤコート｜買取相場と現実

まずは、私たちが最も気になる「お金」の話から始めましょう。

「良いもの」であれば高く売れるはずだという感覚は、新品市場では通用しますが、中古市場においては全く別の論理が働いています。

ここでは、ノンブランドのカシミヤコートが実際にどれくらいの価格で取引されているのか、その冷徹な現実と背景にある理由を深掘りしていきます。

ノンブランド品の買取相場はいくらになるか

結論から言うと、ノンブランドのカシミヤコートの買取相場は、私たちの期待を遥かに下回る金額になることがほとんどです。具体的に言えば、1着あたり数十円から、良くて数百円程度というのが現実的なラインです。場合によっては「10円」、あるいは「買取不可（0円）」と査定されることも全く珍しくありません。

「カシミヤ100%という素材の価値があるのに、なぜ？」と疑問に思うかもしれません。しかし、リユース市場において価格を決める決定的な要素は、「素材」そのものよりも「ブランドの信用」なのです。ブランドタグがない商品は、品質を保証する後ろ盾が存在しません。

買い手（次の購入者）からすれば、「本当に品質が良いのか？」「偽装表示ではないか？」という不安が付きまとうため、リスクプレミアムとして価格が極限まで押し下げられてしまうのです。

実際に、Yahoo!オークションなどの個人間取引の履歴を分析してみても、有名ブランドのカシミヤコートが数千円から数万円で取引されているのに対し、ノンブランド品は300円～500円程度でようやく落札されているケースが散見されます。

個人売買ですらこの価格帯なのですから、買取業者が経費（人件費、保管費、光熱費など）を差し引いて買い取るとなれば、手元に残る金額が「10円」や「100円」になってしまうのは、経済的な仕組み上、避けられないことなのです。

古いコートやネーム刺繍入りでも売れるのか

実家の整理をしていたら、バブル時代に買ったような肩パッドがしっかり入ったカシミヤコートや、裏地に漢字で名前の刺繍が入っているコートが出てきた、という経験はありませんか？ これらが売れるかどうかというと、「一般的な古着買取店では買取不可、もしくは0円査定になる可能性が極めて高い」と言わざるを得ません。

リユースショップの査定基準には、明確に「トレンド」が含まれています。一般的に、発売から3年以上経過した服は評価が下がると言われていますが、特にコートのような重衣料はシルエットの変化が顕著です。10年以上前のコートは、素材がどれほど上質でも、「今の時代に着るには古臭い」と判断され、再販価値がないと見なされてしまうのです。

また、ネーム刺繍も大きなマイナスポイントです。刺繍をほどいて跡を消すには、専門的な技術と手間がかかります。数百円でしか売れない商品に対して、その手間賃をかける業者はまずいません。さらに、カシミヤなどの動物性繊維は虫食いの被害に遭いやすいため、長期保管していたコートは小さな穴が開いていることも多く、これも買取不可の要因となります。

ユニクロ等ファストファッションの取り扱い

よくある誤解として、「ユニクロやGUのカシミヤ製品は、ノンブランドと同じ扱いになるのではないか？」という疑問があります。これについては明確な答えがあります。リユース市場において、ユニクロは立派な「ブランド」として認知されています。

ユニクロのカシミヤセーターやコートは、新品の販売数が多く、品質も安定しているため、中古市場でも「普段使い用」として一定の需要があります。そのため、タグのない完全なノンブランド品よりも、ユニクロのタグが付いている製品の方が、数十円から数百円程度で安定して買い取ってもらえる可能性が高いのです。トレファクスタイルやブックオフなどでも、ユニクロは買取対象ブランドとして明記されていることが多いです。

宅配買取で単体送付だと不可になる理由

「近くにお店がないから、段ボールに詰めて宅配買取で送ってしまおう」と考える方も多いでしょう。

しかし、ここには非常に大きな落とし穴があります。多くの大手買取業者では、ノンブランド品のみの宅配買取には厳しい制限を設けているのです。

その最大の理由は「物流コスト」です。冬物のカシミヤコートは嵩張り、重量もあります。これを宅配便で送ると、往復の送料だけで簡単に1,000円～1,500円ほどかかってしまいます。先ほどお話しした通り、ノンブランドコートの再販利益は数百円程度しか見込めません。つまり、業者が送料を負担して買い取ってしまうと、その時点で確実に「赤字」になってしまうのです。

そのため、「ノンブランド買取OK」と謳っている業者でも、規約をよく読むと「指定ブランド品と同梱の場合に限る」や「ノンブランドのみ送付された場合は、送料お客様負担で返送（着払い）」といった厳しい条件が書かれていることがほとんどです。安易に送ってしまうと、査定額がつかないどころか、返送料で損をするという最悪の事態になりかねませんので、事前の確認が不可欠です。

査定額が安い理由と高価買取の幻想

ここまで読んで、「カシミヤ100%なのに、どうしてこんなに安く買い叩かれるの？」と、納得がいかない気持ちになるかもしれません。しかし、リユース業者のビジネスモデルを理解すると、この安さには合理的な理由があることがわかります。

業者が1着のコートを買い取ってから販売するまでには、膨大なコストがかかります。検品、クリーニングやプレス、保管場所の確保、商品写真の撮影、採寸、WEBサイトへの掲載、そして売れた後の梱包・発送作業。これらの人件費や管理費を積み上げると、1着あたり数千円のコストがかかることもあります。売れるかどうかわからない、しかも単価の安いノンブランド品に、これだけのコストをかけるのはリスクが高すぎるのです。

一方で、メルカリなどのフリマアプリを使えば、もう少し高く売れる可能性はあります。しかし、写真撮影や採寸、購入者とのやり取り、梱包発送の手間、そして「サイズが合わない」「思っていたのと違う」といったクレーム対応のリスクを全て自分で負わなければなりません。買取業者の査定額が安いのは、こうした「面倒な手間とリスク」を全て代行してくれる手数料が含まれているからだと考えることもできます。

もし、「少しでも高く売りたいから」といって、売る前にクリーニングに出そうと考えているなら、ちょっと待ってください。クリーニング代の方が買取額より高くなってしまい、結果的に損をする可能性が非常に高いです。

クリーニング料金については以下の記事も参考にしてください。

ノンブランドのカシミヤコート｜買取以外も！処分方法の正解

では、値段がつかないノンブランドのカシミヤコートは、ただゴミとして捨てるしかないのでしょうか？ いいえ、そんなことはありません。目的や状況に合わせて「手放し方」を工夫することで、現金化したり、お得なクーポンに変えたりすることが十分に可能です。

ここでは、私が様々な方法をリサーチし、実際に試してきた中で、最もおすすめできる4つの「出口戦略」をご紹介します。

エコリングでブランド品と同梱して売る

もし、ご自宅に「もう使わないブランド品」が一つでもあるなら、エコリングの宅配買取を活用するのが最も賢い戦略の一つです。

エコリングは、基本的にノンブランド品のみの宅配買取は受け付けていません。しかし、「買取対象のブランド品が1点でも同梱されていれば、ノンブランドの服も一緒に送ってOK」というルールが適用される場合があります（※時期やキャンペーン内容によりますので、必ず申し込み前に公式サイトで確認してください）。

ここでのポイントは、「ブランド品」の定義が比較的広いことです。ルイ・ヴィトンやシャネルのようなハイブランドである必要はありません。例えば、使いかけのブランド香水、コスメ、あるいは指定された中堅ブランドのバッグなどでも条件を満たすことがあります。

これらを「通行手形」として使い、処分に困っているカシミヤコートを同梱することで、送料負担なしで引き取ってもらうことができるのです。まさに「合わせ技」の処分方法です。

ブックオフの店舗持ち込みなら査定が可能

「ブランド品なんて一つも持っていない」という方は、近所のBOOKOFF（ブックオフ）の店舗に直接持ち込むのが、最も手軽で確実な方法です。

ブックオフの大型店舗（BOOKOFF SUPER BAZAARなど）にあるアパレル買取コーナーは、ブランド・ノンブランドを問わず、1点から査定を受け付けてくれるという圧倒的な「入りやすさ」が魅力です。独自のデータベースシステムを使って機械的に査定を行うため、店員さんの個人の好みや目利きに左右されにくく、カシミヤ素材であれば「冬物コート」というカテゴリーで、数十円～数百円程度の値段がつく可能性があります。

何より、目の前で査定してもらえるので安心感がありますし、もし値段に納得できなければその場でキャンセルして持ち帰ることも可能です。また、値段がつかない場合でも無料で引き取ってくれる（リサイクル処分してくれる）ケースが多いため、断捨離の手段としては非常に優秀です。

キングファミリーの重量査定で確実に処分

「目立つシミがある」「虫食いの穴が開いている」「30年前のデザインで肩パッドがすごい」といった理由で、他店で断られてしまったコートの最後の砦となるのが、キングファミリーです。

キングファミリーの最大の特徴は、服のブランドやデザイン、流行を一切問わず、「重さ（kg）」で買取価格が決まるという独自のシステムです。お店で再販できる服なら1kgあたり150円、リサイクル資源として海外輸出やウエス加工に回す服なら1kgあたり1円といった具合に、どんな状態の服でも（濡れていたり、カビや油汚れが酷いものを除けば）基本的に買い取ってくれます。

カシミヤコートは生地がしっかりしていて重さがあるため、重量査定とは非常に相性が良いアイテムです。1着だけ持ち込むのではなく、家中の着ない服をまとめて大きな袋に詰め、一気に持ち込んで「重さ」をお金に変えてしまいましょう。断捨離が一気に進み、部屋も心もスッキリしますよ。

髙島屋のリサイクル回収でクーポンに交換

個人的に、最も経済的メリットが大きいと感じているのが、百貨店の回収キャンペーンを利用して「価値交換」をする方法です。

例えば、高島屋が実施している「Depart de Loop（デパート・デ・ループ）」のようなプロジェクトでは、期間限定で不要になった衣料品（特にカシミヤ製品など）の回収を行っています。このキャンペーンの凄いところは、持ち込みの見返りとして、その百貨店で使える「1,000円分のお買い物クーポン」などがもらえる点です。

リサイクルショップで「10円」と査定される、あるいは買取不可となるノンブランドのコートが、このキャンペーンを利用すれば「1,000円」の価値（割引券）に化けるのです。現金そのものではありませんが、新しいハンカチや靴下、食品などを買う予定がある人にとっては、実質的な還元率が最も高い選択肢と言えるでしょう。

回収されたカシミヤは、反毛（はんも）という技術で繊維に戻され、新しい製品へと生まれ変わります。これは環境省も推進するサステナブルな取り組みの一環でもあります。（出典：環境省『サステナブルファッション』）

クーポンによる還元という意味では、スーツの下取りサービスとも似たメリットがあります。興味がある方は以下の記事も参考にしてみてください。

まとめ：ノンブランドのカシミヤコートを賢く買取してもらう方法

ノンブランドのカシミヤコートの買取について、厳しい現実と、それを乗り越えるための具体的な対策をお話ししてきました。

最後に、この記事のポイントをわかりやすく表にまとめましたので、ご自身の状況に合わせて最適な方法を選んでください。

「高価買取」という甘い言葉に踊らされず、現実を見据えた上で最適な手放し方を選ぶこと。それが、結果として時間もお金も無駄にしない一番の近道です。

ノンブランドであっても、資源としての価値は十分にあります。ただゴミとして捨てるのではなく、次のサイクルへ繋ぐことが、2025年を生きる私たちにできる、最も洗練されたサステナブルな選択ではないでしょうか。