知らない人に服を汚されたり、逆に友達の大切な服を汚してしまったり、予期せぬトラブルは誰にでも起こり得るものです。
そんな時、「汚された服のクリーニング代請求はどうすればいいの?」「誠意が伝わるお詫びの文や封筒の書き方は?」と頭を悩ませる方は少なくありません。
特に、嘔吐物(ゲロ)を吐かれてしまった場合のクリーニング代や、汚れが落ちず弁償になった際の全額負担の要否、さらには法律上の問題まで気になることでしょう。
この記事では、そんなお悩みを解決するため、クリーニング代の請求文例も交えながら、他人の服を汚してしまった、あるいは汚されてしまった、あらゆる状況に円満に対応できる知識を詳しく解説していきます。
- 相手や状況に応じたお詫びの適切な金額
- 誠意が伝わるお詫びの仕方やお金の渡し方のマナー
- クリーニング代を請求する側・される側の法的知識
- トラブルを円満に解決するための具体的な文例
お詫びのクリーニング代相場の基礎知識:相手別の対応
- 知らない人に服を汚された場合の対処法
- 友達の服を汚してしまった時の人間関係
- 服を汚された!クリーニング代請求は可能か
- 損害賠償に関する法律のポイント
- 謝罪の気持ちを伝えるお詫び文
- お金を包む際の封筒の書き方とマナー
知らない人に服を汚された場合の対処法

街中や飲食店などで、見知らぬ人にうっかり服を汚されてしまうケースは少なくありません。突然の出来事に動揺してしまいますが、冷静な初期対応がその後のトラブル回避に繋がります。何よりもまず、その場で相手と話し合い、連絡先を交換することが最も重要です。
感情的になって相手を責めるのではなく、「洋服が汚れてしまったので、クリーニング代など今後のご相談をさせていただきたい。」と冷静に切り出しましょう。スマートフォンで電話番号を交換し、その場で着信を確認し合うのが確実です。もし相手が連絡先の交換を渋る場合は、お店のスタッフや、場合によっては警察に間に入ってもらうことも検討する必要があります。
連絡先を交換できたら、後日クリーニングの見積もりを取り、その金額を相手に伝えて請求するという流れが一般的です。後々の「言った・言わない」のトラブルを防ぐためにも、やり取りはメールやLINEなど、記録に残る形で行うことをお勧めします。
その場で示談金を要求するのはNG
汚された側も「早く解決したい」という気持ちから、その場で「〇〇円ください」と現金での解決を求めるケースがありますが、これは避けるべきです。実際のクリーニング代が想定より高かったり、逆に安かったりした場合、どちらかに不満が残り、後々のトラブルに発展しかねません。必ず後日、正式な見積もりをもとに話し合いましょう。
友達の服を汚してしまった時の人間関係

お詫びの対応で最もデリケートなのが、相手が友達の場合です。親しい間柄だからこそ、「お金の話はしにくい」「関係が気まずくなったらどうしよう」と悩んでしまいます。しかし、親しいからこそ、より一層誠実な対応が求められます。
まず大切なのは、心からの謝罪です。「ごめん!」の一言だけでなく、「本当に申し訳ないことをした」という気持ちを真摯に伝えましょう。その上で、「クリーニングに出させてほしい」と申し出ることが基本です。相手が「気にしないでいいよ」と遠慮することもありますが、その言葉に甘えてしまうと、相手の心にしこりが残ってしまう可能性があります。

「いいよ」と言われても、最低限クリーニング代として3,000円〜5,000円程度を包んで渡すか、同程度の菓子折りなどをお詫びの品として渡すのが、友人関係を良好に保つ秘訣です。相手に気を使わせないよう、「これで美味しいものでも食べて!」と明るく渡すなどの配慮も大切になります。
お金のやり取りは関係を壊すリスクもはらんでいますが、逆に言えば、誠実な対応は二人の信頼関係をより深める機会にもなり得ます。なあなあで済ませず、きちんと向き合う姿勢を見せることが重要です。
服を汚された!クリーニング代請求は可能か

結論から言うと、他人の過失によって服を汚された場合、クリーニング代を請求することは法的に可能です。これは、民法で定められている「不法行為に基づく損害賠償請求」にあたります。
民法709条には、「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」と定められています。つまり、相手の不注意(過失)であなたの服(財産)が汚れた(損害が生じた)場合、相手にはその服を元に戻す(原状回復)ための費用、すなわちクリーニング代を支払う義務が発生するのです。
もちろん、請求できるからといって、高圧的な態度で請求するのは得策ではありません。あくまで「こちらの過失ではないので、かかった費用はご負担いただけますでしょうか」というスタンスで、丁寧にお願いすることが円満な解決への近道です。多くの場合は当事者間の話し合いで解決しますが、法的な根拠を知っておくことで、冷静かつ有利に交渉を進めることができます。
損害賠償に関する法律のポイント

クリーニング代を請求する、あるいは支払う際に知っておきたい法律上のポイントがいくつかあります。まず、損害賠償の範囲は、原則として「その損害を回復するために必要かつ相当な費用」とされています。
賠償の範囲について
- クリーニング代:シミ抜き代を含め、汚損した衣服を元の状態に戻すための費用。これは最も一般的な賠償範囲です。
- 慰謝料:精神的苦痛に対する賠償金。服を汚された程度で慰謝料が認められるケースは、社会通念上極めて稀です。例えば、結婚式のスピーチ直前に汚され大恥をかいたなど、特別な事情がない限り請求は難しいでしょう。
- 衣服の購入代金:クリーニングで汚れが落ちない場合、弁償として問題になります。ただし、賠償額は購入時の金額ではなく、汚損された時点での価値(時価額)が基準となります。これについては後ほど詳しく解説します。
つまり、基本的には「かかったクリーニング代実費」が賠償額の基本になると考えておけば間違いありません。法的な知識はあくまでお守りのようなもの。大切なのは、法律を振りかざすことではなく、相手と真摯に話し合い、お互いが納得できる落としどころを見つけることです。
謝罪の気持ちを伝えるお詫び文

服を汚してしまい、クリーニング代を渡す際には、お金だけでなく謝罪の言葉を添えることが非常に重要です。口頭での謝罪はもちろんですが、手紙やメッセージカードを添えると、より一層誠意が伝わります。
文章を作成する際のポイントは、以下の3つです。
- 具体的な謝罪の言葉:「先日は、私の不注意で〇〇様の大切なブラウスを汚してしまい、誠に申し訳ございませんでした。」のように、何に対して謝罪しているのかを明確にします。
- 相手への配慮:「クリーニングにお持ちいただくお手間をおかけしますこと、重ねてお詫び申し上げます。」など、相手の手間を気遣う一文を加えます。
- 今後の対応:「心ばかりではございますが、クリーニング代としてお納めください。もし不足がございましたら、遠慮なくお申し付けください。」と伝え、誠実な対応の意思を示します。
お詫びの文例
〇〇様
先日は、私の不注意により、〇〇様の大切なお洋服を汚してしまい大変申し訳ございませんでした。
お気に入りのお洋服と伺っており、大変心苦しく思っております。
心ばかりではございますが、クリーニング代を同封いたしましたので、どうぞお納めください。もしご不足のようでしたら、ご遠慮なくお申し付けください。
この度はご迷惑をおかけしましたこと、重ねて深くお詫び申し上げます。
署名
このように、丁寧な言葉で謝罪の気持ちと今後の対応を伝えることで、相手の気持ちも和らぎ円満な解決に繋がりやすくなります。
お金を包む際の封筒の書き方とマナー

クリーニング代として現金を渡す際は、お金を裸で渡すのはマナー違反です。必ず封筒に入れましょう。その際の封筒の選び方や書き方にも、守るべきマナーがあります。
基本的には、郵便番号欄のない真っ白な無地の封筒を使用するのが最も無難で丁寧です。お祝い事で使う「のし袋」は、たとえ水引が結び切りであっても、お詫びの場面にはふさわしくないため、避けた方が良いでしょう。
項目 | ポイント |
---|---|
封筒 | 郵便番号欄のない、白無地の二重封筒が最も丁寧。なければ一重でも可。 |
表書き | 封筒の表中央に「お詫び」や「クリーニング代」と書く。書かなくても失礼にはあたらない。 |
裏書き | 裏面の左下に、自分の住所と氏名を記入する。 |
お札 | 可能な限り新札を用意する。難しい場合は、シワや汚れのない綺麗なお札を選ぶ。 |
入れ方 | お札の肖像画が描かれている面を、封筒の表側・上側に来るように揃えて入れる。 |
これらのマナーは、細かいことのように思えるかもしれませんが、「細部まで気を配れる誠実な人」という印象を与え、相手の信頼を得るために非常に重要です。お金を渡すという行為だからこそ、最大限の配慮を心がけましょう。
状況別:お詫びのクリーニング代相場と請求方法
- クリーニング代の請求文例
- 最悪の事態!ゲロのクリーニング代について
- クリーニングで落ちない汚れの弁償は全額か
- 法律トラブルを避けるための注意点
- 覚えておきたい!お詫びのクリーニング代相場
クリーニング代の請求文例

服を汚された側としてクリーニング代を請求する場合、相手に不快感を与えず、スムーズに支払ってもらうための文面が重要です。感情的にならず、事務的かつ丁寧に事実を伝えることを心がけましょう。
メールやLINEで連絡する場合、以下のような文例が参考になります。
クリーニング代請求の文例
件名:先日のお洋服のクリーニング代について(自分の氏名)
〇〇様
先日はお疲れ様でした。(自分の氏名)です。
さて、先日汚れてしまいましたジャケットの件ですが、クリーニング店に見積もりを依頼しましたのでご報告いたします。
シミ抜きを含むクリーニング代として、〇〇円かかるとのことでした。見積書の写真を添付いたしますので、ご確認いただけますでしょうか。
大変恐縮ですが、こちらの費用をご負担いただくことは可能でしょうか。お支払い方法につきましては、〇〇様のご都合の良い方法で構いません。ご検討のほど、よろしくお願い申し上げます。
ポイントは、見積書など金額の根拠となるものを必ず提示することです。これにより、請求の透明性が増し、相手も納得しやすくなります。また、「ご負担いただくことは可能でしょうか」と相手に判断を委ねる形にすることで、一方的な要求という印象を和らげることができます。
最悪の事態!ゲロのクリーニング代について

数ある汚れの中でも、嘔吐物(ゲロ)による汚れは最も対応が難しく、費用も高額になりがちです。通常のクリーニング店では断られることも少なくなく、嘔吐物や体液などを専門に扱う特殊なクリーニング業者に依頼する必要があります。
この場合、費用は単なるシミ抜き代では済みません。完全な殺菌・消臭処理が必要になるため、クリーニング代は10,000円から30,000円、あるいはそれ以上になることも珍しくありません。特に、コートや高級素材のドレスなどになると、高額になる傾向があります。
衛生面と精神的苦痛
嘔吐物(ゲロ)による汚損は、単に服が汚れたという物理的な損害だけではありません。衛生的な問題や、汚された側の精神的な苦痛も非常に大きいものです。加害者側は、費用の高さに驚くかもしれませんが、被害者の不快感を十分に理解し、誠心誠意、謝罪と賠償に応じる必要があります。
このようなケースでは、お詫びとしてクリーニング代の実費に加え、迷惑料として数千円〜1万円程度を上乗せしてお渡しするのが、丁寧な対応と言えるでしょう。
クリーニングで落ちない汚れの弁償は全額か

クリーニングに出したものの、残念ながらシミが完全に落ちなかった場合、問題は「弁償」へと発展します。この時、多くの人が疑問に思うのが「購入時の金額を全額弁償してもらえるのか?」という点です。
結論として、原則として購入時の金額が全額弁償されることはありません。法律上の損害賠償は、あくまで「汚損された時点での価値(時価額)」が基準となるためです。
衣服は使用することで価値が下がっていく「減価償却資産」と考えられています。例えば、3年前に5万円で購入したコートでも、汚された時点では価値が2万円に下がっているかもしれません。この場合、賠償額の基準は2万円となります。

時価額の算定は非常に難しく、明確な基準はありません。そのため、全国クリーニング生活衛生同業組合連合会が定める「クリーニング事故賠償基準」が参考にされることが多いです。この基準では、購入からの経過年数や使用頻度に応じて賠償割合が細かく定められています。
もちろん、これはあくまで基準であり、最終的には当事者間の話し合いで決定されます。限定品や思い入れのある品など、金銭では測れない価値があることも事実です。加害者側は、基準を盾に賠償額を値切るのではなく、被害者の気持ちに寄り添い、納得のいく解決策を模索する姿勢が求められます。
法律トラブルを避けるための注意点

クリーニング代や弁償をめぐる問題は、当事者間の話し合いで円満に解決するのが一番です。しかし、時には話がこじれ、法的なトラブルに発展するケースもあります。そうならないために、いくつか注意すべき点があります。
- 感情的にならない:腹が立つ気持ちはわかりますが、感情的な物言いは相手を硬化させ、交渉を難航させるだけです。常に冷静かつ丁寧な対応を心がけましょう。
- 証拠を残す:汚れた服の写真、クリーニングの見積書や領収書、相手とのやり取り(メールなど)は、すべて保管しておきましょう。万が一の際に、客観的な証拠として役立ちます。
- 示談書を作成する:賠償金の支払いが完了し、双方が合意に至ったら、「示談書」を作成することをお勧めします。示談書には、「本件に関して、当事者間には本示談書に定めるもののほかに何らの債権債務のないことを相互に確認する」といった清算条項を入れます。これにより、後日追加の請求をされるといったトラブルを防ぐことができます。
これらの点を意識するだけで、無用なトラブルを大きく減らすことができます。もし当事者間での解決が困難な場合は、弁護士や市区町村の無料法律相談、消費生活センターなどに相談することも検討しましょう。
覚えておきたい!お詫びのクリーニング代相場
これまで解説してきた内容の要点を、最後にリスト形式でまとめます。このポイントを押さえておけば、いざという時に慌てず適切に対応できるはずです。
- 他人の服を汚した場合のお詫びの相場は3,000円〜5,000円が一般的
- お詫びの気持ちとしてクリーニング代実費に迷惑料を上乗せするのが丁寧
- スーツや高価な服の場合は5,000円〜10,000円、あるいはそれ以上を検討する
- 相手が友達でも、誠実な謝罪とクリーニングの申し出が不可欠
- 現金を渡す際は白い無地の封筒に入れ、お札の向きを揃えるなどマナーを守る
- 知らない人に汚されたら、その場で必ず連絡先を交換する
- クリーニング代の請求は法的に正当な権利(不法行為に基づく損害賠償請求)
- 請求する側は、見積書など金額の根拠を明確に提示する
- 嘔吐物(ゲロ)など特殊な汚れのクリーニング代は1万円以上と高額になる可能性がある
- クリーニングで汚れが落ちず弁償になった場合、賠償額は購入時の全額ではなく「時価額」が基準
- 慰謝料の請求は、よほど特別な事情がない限り認められない
- 話し合いで解決した際は、後のトラブルを防ぐために示談書を作成するのが望ましい
- トラブルがこじれた場合は、弁護士や消費生活センターなどの専門機関に相談する
- 最も大切なのは法律知識よりも、相手の気持ちに寄り添い、円満な解決を目指す姿勢
- 誠実な対応が、不要なトラブルを防ぎ、人間関係を守る鍵となる