服が湿っている状態で、クリーニング店に持ち込もうとしていませんか?
特に、自宅でドライクリーニング表示の服を洗濯してしまった場合など、慌ててしまいますよね。
しかし、濡れた衣類をそのまま出すと、生乾き臭の原因になったり、最悪の場合クリーニングで綺麗になってないどころか、黄ばんで戻ってくるなんてことも。嘔吐物などで汚いまま出すのも論外です。
この記事では、クリーニング店の洗い方の仕組みから、なぜ濡れた衣類がダメなのか、クリーニング後にがっかりしないための正しい対処法を詳しく解説します。
- 濡れた衣類をクリーニングに出すのがNGな理由
- 濡れたまま出した場合に起こる様々なトラブル
- 状況に応じた衣類の正しい対処法
- 後悔しないためのクリーニング店の選び方
クリーニングへ濡れたまま出すのがNGな理由
- 衣類が湿ってる状態で出すのはマナー違反
- 放置すると生乾き臭やカビの原因になる
- クリーニング店の特殊な洗い方を知ろう
- ドライクリーニングすべき衣類を洗濯してしまった時
- 嘔吐物などで汚いまま持ち込むのは絶対NG
衣類が湿ってる状態で出すのはマナー違反

結論から言うと、濡れたり湿ったりした衣類をそのままクリーニング店に持ち込むのは、原則としてNGです。これは技術的な問題だけでなく、他のお客様への配慮や店舗運営におけるマナーの問題でもあります。
多くのクリーニング店では、お客様から預かった衣類を大きな袋にまとめて専門の工場へ運びます。もしその中に濡れた衣類が1点でもあると、袋の中の湿度が上がり、他のお客様の大切な衣類にまでカビやニオイが移ってしまう危険性があります。これは、お店にとって非常に大きなリスクとなるのです。
そのため、ほとんどのクリーニング店では「濡れたもの・乾いていないもの」を取扱除外品としており、受付の段階で受け取りを断られます。自分の衣類のためだけでなく、他のお客様のためにも、衣類は必ず乾かしてから持ち込むのが基本的なマナーと言えます。
濡れた衣類はトラブルの元
濡れた衣類は、お店の作業効率を低下させるだけでなく、他の衣類への悪影響(色移り、カビ、ニオイ移り)を引き起こす可能性があります。お店側からしても、受け取ることは大きなリスクとなるため、断られるのが一般的です。
放置すると生乾き臭やカビの原因になる

雨に濡れたり、洗濯後に干し忘れたりした衣類をそのまま放置すると、不快な「生乾き臭」が発生します。このニオイの正体は、「モラクセラ菌」という雑菌です。
モラクセラ菌は、衣類に残った水分や皮脂汚れをエサにして増殖し、その際に排出するフンのような物質があの嫌なニオイの原因となります。この菌は紫外線にも強く、一度繁殖してしまうと、通常の洗濯で完全に除去するのは非常に困難です。
さらに湿った状態が続くと、菌だけでなくカビも発生し始めます。黒カビなどが繊維の奥深くまで根を張ってしまうと、クリーニングのプロでも完全に取り除くのは難しくなり、衣類そのものをダメにしてしまうことにもなりかねません。濡れてしまった衣類は、できるだけ早く乾燥させることが何よりも重要です。
豆知識:モラクセラ菌とは?
私たちの身の回りのどこにでも存在する常在菌の一種です。特に高温多湿の環境を好み、洗濯で落としきれなかった皮脂などを栄養源に爆発的に増殖します。生乾き臭を防ぐには、菌が増殖する前に「素早く乾かす」ことが鉄則です。
クリーニング店の特殊な洗い方を知ろう

なぜクリーニング店は濡れた衣類を嫌がるのでしょうか。その最大の理由は、クリーニングの主要な洗浄方法である「ドライクリーニング」の仕組みにあります。
「ドライ」という名前の通り、ドライクリーニングは水を一切使わずに、石油系の有機溶剤という”油”を使って衣類を洗う方法です。この方法は、油性の汚れ(皮脂、ファンデーション、油性ボールペンなど)を溶かし出すのに非常に効果的で、水洗いのように繊維を膨潤させないため、型崩れや縮みが起きにくいという大きなメリットがあります。
しかし、この溶剤は油であるため、当然ながら水とは混じり合いません。濡れた衣類をドライクリーニング機に入れると、水分が洗浄の邪魔をして十分な効果が得られないばかりか、以下のようなトラブルを引き起こす原因になります。
洗浄方法 | 洗浄媒体 | 得意な汚れ | 特徴 |
---|---|---|---|
ドライクリーニング | 有機溶剤(油) | 油性汚れ(皮脂、油性インク等) | 型崩れや縮みが起きにくいが、水溶性の汚れは落ちにくい。 |
ウェットクリーニング | 水 | 水溶性汚れ(汗、飲み物等) | さっぱりするが、専門技術が必要で型崩れのリスクがある。 |
このように、クリーニング店では衣類の素材や汚れの種類に応じて洗い方を使い分けています。濡れた状態の衣類は、この専門的な洗浄プロセスの妨げになってしまうのです。
ドライクリーニングすべき衣類を洗濯してしまった時

特に注意が必要なのが、本来ドライクリーニングに出すべき衣類を、誤って自宅で水洗いしてしまったケースです。濡れてしまったからといって、慌ててそのままクリーニング店に持ち込むのは絶対にやめましょう。
ウールやシルク、レーヨンといったデリケートな素材は、水に濡れると繊維が膨らんで非常に不安定な状態になります。この状態で、さらにドライクリーニングの溶剤や機械的な力にさらされると、取り返しのつかないほどの縮みや型崩れを引き起こす可能性があります。

自宅で洗ってしまった場合は、正直にその旨を店員さんに伝えることが最も重要です。プロはそういった衣類の状態を見極め、ウェットクリーニングに切り替えるなど、最適な対処法を提案してくれます。隠して出すのが一番危険ですよ。
最悪の場合、クリーニング店側も責任を負えない「洗い上がり保証対象外」として扱われることもあります。失敗してしまった時こそ、正直にプロへ相談することが大切です。
嘔吐物などで汚いまま持ち込むのは絶対NG

前述の通り、濡れた衣類は基本的にNGですが、中でも嘔吐物や排泄物などで汚れた衣類を、処置せずにそのまま持ち込むのは論外です。
これはマナー違反というレベルではなく、衛生上の極めて危険な行為です。特に、嘔吐物にはノロウイルスなどの感染症の原因となる菌が含まれている可能性があり、クリーニング店のスタッフや他のお客様を深刻な健康被害に晒すことになりかねません。そのため、ほとんどの店舗では、このような汚物が付着した衣類の受け取りを固く断っています。
自宅でできる応急処置
やむを得ずクリーニングを依頼したい場合は、必ず以下の応急処置を行ってから、お店に持ち込めるか事前に相談してください。
- ゴム手袋とマスクを着用し、固形物をティッシュなどで丁寧に取り除く。
- 汚れた部分を、他の場所に広がらないように注意しながら、水で軽くつまみ洗いする。
- 衣類をビニール袋に入れてしっかりと密封する。
- 持ち込む前に必ず店舗に電話し、「感染症の可能性がある嘔吐物が付着した」という事実を正確に伝え、受け入れ可能か確認する。
感染症のリスクを軽視しない
ウイルスは目に見えません。自分や家族の健康はもちろん、社会全体への責任として、汚物が付着した衣類の取り扱いには細心の注意を払いましょう。多くの保健所や厚生労働省のウェブサイトでも、汚染された衣類の処理方法について注意喚起がなされています。
濡れたままクリーニングへ出した際のトラブル
- なぜクリーニングで綺麗になってないのか
- クリーニング後、黄ばんで戻ってきた時の原因
- 追加料金や仕上がりが遅れるケースも
- インク等のシミは乾かす前に相談が必須
- クリーニング後の衣類を再度洗濯すべきか
- 結論:衣類を濡れたままクリーニングへ出すのはデメリットのみ
なぜクリーニングで綺麗になってないのか

濡れたままの衣類をクリーニングに出した結果、「なんだか綺麗になってない…」と感じることがあります。その原因は、やはり水分が邪魔をして適切な洗浄ができなかったことにあります。
例えば、ドライクリーニングでは汗などの水溶性の汚れは元々落ちにくい性質があります。衣類が濡れていると、この傾向はさらに強まり、皮脂汚れは落ちても汗の成分は繊維に残ったまま、という状態になりがちです。これが、さっぱりしない、綺麗になっていないと感じる主な理由です。

実は、濡れたままだと汚れが落ちにくいだけでなく、逆に汚れが固着することもあります。水分によって開いた繊維の隙間に、本来落ちるはずだった汚れが入り込んでしまうイメージですね。結果として、洗う前より状態が悪化することすらあります。
また、お店側もトラブルを避けるために、シミ抜きなどの積極的な処置を控えめにすることがあります。結果として、全体的に中途半端な仕上がりになってしまうのです。
クリーニング後、黄ばんで戻ってきた時の原因

「クリーニングに出したのに、前より黄ばんで戻ってきた」という最悪のケースも、濡れた衣類が原因で起こり得ます。
この黄ばみの主な原因は、ドライクリーニングで落としきれなかった皮脂や汗などの「水溶性の汚れ」が、乾燥やプレスの工程で加えられる熱によって酸化することです。汚れが化学変化を起こし、黄色いシミとなって繊維に定着してしまうのです。
また、別の原因として、クリーニング店の溶剤管理の問題も考えられます。本来、ドライクリーニングの溶剤はフィルターなどで常に浄化されていますが、濡れた衣類が持ち込まれると溶剤に水分が混入し、浄化能力が低下します。汚れた溶剤で洗うことで、他の衣類から出た汚れが再付着(逆汚染)し、黄ばみやくすみを引き起こすこともあるのです。
黄ばみは「酸化」のサイン
衣類の黄ばみは、汚れが落ちきらずに繊維の上で酸化してしまった証拠です。これは一度発生すると元に戻すのが非常に難しくなります。適切な状態でクリーニングに出すことが、黄ばみを防ぐ第一歩です。
追加料金や仕上がりが遅れるケースも

もし、クリーニング店が濡れた衣類を受け付けてくれたとしても、それは通常のサービスとは異なる「特別対応」となります。そのため、ほとんどの場合で追加料金が発生し、仕上がりまでの日数も通常より長くなります。
なぜなら、お店はまずその衣類を他のものとは別に、専用のスペースで完全に乾燥させる必要があるからです。この「乾燥させる」という一手間が、通常のクリーニング工程には含まれていない余分な作業となります。この手間賃が、「乾燥料金」や「特別処理料金」といった名目でクリーニング代に上乗せされるのです。
料金と納期の目安
追加料金は店舗によって異なりますが、500円~2,000円程度が加算されることが一般的です。また、乾燥させる時間が必要なため、仕上がりも通常より1日~3日ほど遅れることを見込んでおく必要があります。「急いでいるから」と濡れたまま持ち込むのは、かえって逆効果になることを覚えておきましょう。
インク等のシミは乾かす前に相談が必須

ここまで、濡れた衣類は乾かしてから出すのが原則だと説明してきましたが、一つだけ例外的なケースがあります。それは、ボールペンやインク、ペンキといった一部の特殊なシミが付いてしまった場合です。
これらのシミは、一度乾いて繊維にインクや顔料が固着してしまうと、プロでも除去が非常に困難になります。そのため、シミの種類によっては、あえて乾かさずに濡れた状態のまま持ち込んだ方が、シミ抜きが成功する確率が高まることがあるのです。
しかし、これはあくまで特殊なケースであり、自己判断は絶対に禁物です。必ず以下の手順を踏んでください。
- シミに触ったりこすったりせず、現状を維持する。
- すぐにクリーニング店に電話し、「油性ボールペンのシミが付いたが、濡れている。どうすれば良いか」と具体的に相談する。
- お店の指示に従う(多くの場合、「ビニール袋に入れるなどして乾かないように持ってきてください」と言われます)。
この手順を踏むことで、大切な衣類を救える可能性が高まります。慌てて自分で処置したり、乾かしたりする前に、まずはプロに相談しましょう。
クリーニング後の衣類を再度洗濯すべきか

クリーニングの仕上がりに満足できなかった場合、「もう一度自分で洗い直そう」と考えるかもしれませんが、それはお勧めできません。
クリーニング後の衣類は、一見きれいに見えても、繊維にはドライクリーニングの溶剤や、再仕上げ用の柔軟剤などがわずかに残留している可能性があります。また、デリケートな素材はプロの工程を経て、家庭での洗濯には耐えられない状態になっていることも考えられます。ここに自己流で手を加えると、さらなる色落ちや縮み、風合いの変化といった取り返しのつかないダメージを与えかねません。
まずは「再仕上げ保証」の確認を!
多くのクリーニング店では、仕上がりに不満があった場合に無料でやり直してくれる「再仕上げサービス」や「品質保証制度」を設けています。通常、受け取り後1週間~1ヶ月以内などの期間が定められています。まずはレシートやタグを確認し、お店に相談するのが最善の策です。
結論:衣類を濡れたままクリーニングへ出すのはデメリットのみ
この記事で解説してきた内容をまとめます。濡れたままの衣類をクリーニングに出すことは、多くのデメリットやリスクを伴います。
- 濡れた衣類はクリーニング店で断られるのが基本
- カビや生乾き臭の原因となり衣類を傷める
- 他の客の衣類に悪影響を及ぼすマナー違反になる
- ドライクリーニングの洗浄効果が著しく低下する
- 縮みや型崩れなど深刻なダメージのリスクが高まる
- 嘔吐物などが付いた衣類は衛生上絶対にNG
- 濡れたままの衣類をクリーニングに出すと、仕上がりが悪くなることも
- 残留した汚れが酸化し黄ばんで戻ってくる危険性
- 受け付けられても追加料金や納期遅延が発生する
- 急いでいる時ほど乾かしてから出すのが近道
- 例外的にインク等のシミは濡れたまま相談すべき
- 自己判断で乾かす前に必ずプロに電話で確認する
- 仕上がりに不満があっても自宅で洗い直すのは避ける
- まずは再仕上げ保証サービスを利用して相談する