ハンドメイドを楽しんでいると、お気に入りの生地が少しだけ足りない、という状況に直面することがありますよね。失敗して後悔する前に、布の継ぎ足しを目立たないように仕上げる方法を知っていれば、作品の可能性はさらに広がります。
この記事では、生地が足りない時の基本的な継ぎ足し方から、2枚の布を1枚にする縫い方まで、具体的なテクニックを解説します。布をつなぎ合わせる縫い方には様々な種類があり、ミシンでの方法はもちろん、手縫いのコツもご紹介します。
さらに、布をつなぎ合わせる際にテープを使う簡単な方法や、気になる強度についても詳しく触れていきますので、初心者の方でも安心して取り組めるはずです。
この記事を読めば、以下の点について理解を深めることができます。
- 布が足りない時に使える継ぎ足しの基本的な考え方
- ミシンや手縫いで布をきれいに継ぎ足す具体的な方法
- 縫わずに接着テープなどを使う簡単なテクニック
- プリーツや柄物など、ケース別の目立たせない工夫
布の継ぎ足しを目立たないようにする基本テクニック
ここでは、布の継ぎ足しをきれいに仕上げるための基本的な考え方と、ミシンや手縫いでの縫い合わせ方について解説します。
- 生地が足りない場合の継ぎ足しという選択肢
- 布をつなぎ合わせる縫い方の基本的な種類
- 2枚の布を縫い合わせるミシンの使い方
- 2枚の布を縫い合わせる手縫いの方法
- 布をつなぎ合わせる縫い方は手縫いでも可能か
生地が足りない場合の継ぎ足しという選択肢

洋服や小物作りで布を裁断している際に、あと数センチ足りない、という事態は誰にでも起こり得ます。このような時、すぐに諦めて布を買い直すのではなく、「継ぎ足し」という方法を検討してみてはいかがでしょうか。
継ぎ足しは、足りない部分に別の布をつなぎ合わせて必要な大きさにするテクニックです。この方法の最大のメリットは、手持ちの布を無駄なく活用できる点にあります。布を買いに行く手間や追加の費用を節約できますし、特に限定品やお気に入りの生地を最後まで使い切りたい場合には有効な手段となります。
もちろん、デメリットや注意点も存在します。一つは、どうしても継ぎ目(縫い目)ができてしまうことです。デザインの一部として活かすことも可能ですが、無地の布などの場合は継ぎ目が目立ってしまう可能性があります。また、継ぎ足す作業そのものに手間がかかる点も考慮しなくてはなりません。
しかし、裏地や袋の内側など、完成時に表から見えなくなる部分であれば、見た目を気にせず気軽に継ぎ足すことができます。したがって、生地が足りない状況に陥った際は、まずどの部分のパーツなのかを確認し、継ぎ足しが可能かどうかを判断することが大切です。
布をつなぎ合わせる縫い方の基本的な種類

布をつなぎ合わせる縫い方には、いくつかの種類があり、それぞれ仕上がりの見た目や強度、適した生地が異なります。目的やデザインに合わせて最適な方法を選ぶことが、きれいに仕上げるための鍵となります。
代表的な縫い方には「割り伏せ縫い」「折り伏せ縫い」「袋縫い」などがあります。これらは縫い代の始末を兼ねており、ジグザグミシンやロックミシンがなくても布端をきれいに処理できるのが特徴です。
それぞれの縫い方の特徴を以下の表にまとめました。
縫い方の名称 | 特徴 | メリット | デメリット | 主な用途 |
---|---|---|---|---|
割り伏せ縫い | 縫い代を左右に開いて(割って)から、それぞれの縫い代の端を三つ折りにして縫う。 | 縫い目がフラットに仕上がる。厚手の生地に向いている。 | 表にステッチが2本見える。手間が少し増える。 | 厚手のコートの脇線、デニムなど |
折り伏せ縫い | 片方の縫い代でもう一方を包み込み、倒して縫う。 | 丈夫でほつれにくい。見た目がすっきりしている。 | 縫い目にやや厚みが出る。カーブの部分には不向き。 | シャツの脇線、子供服など |
袋縫い | 外表で縫った後、中表にして縫い代を袋状に包み込んで縫う。 | 縫い代が完全に隠れるため、見た目が非常にきれい。 | やや厚みが出る。薄手の生地でないと縫いにくい。 | 裏地のない小物、薄手のブラウスなど |
このように、どの縫い方を選ぶかによって仕上がりは大きく変わります。例えば、厚手の生地でごわつきを抑えたいなら割り伏せ縫いを、子供服など洗濯回数が多く強度が必要なものには折り伏せ縫いを選ぶなど、作るものに合わせて使い分けるのがよいでしょう。
割り伏せ縫い・折り伏せ縫い・袋縫いの詳細については、「KOSHIRAU」というサイトで写真付きで詳しく解説されていましたので、参考にされてください。〉KOSHIRAU「袋縫い・折り伏せ縫い・割り伏せ縫いのやり方(手縫いの布端処理にも)」
2枚の布を縫い合わせるミシンの使い方

ミシンを使って2枚の布を縫い合わせることは、布を継ぎ足す際の最も基本的で効率的な方法です。ミシンを使用すると、手縫いに比べて短時間で、かつ均一で丈夫な縫い目に仕上げることができます。
基本的な手順は、まず2枚の布を「中表(なかおもて)」、つまり表地同士が内側になるように重ね合わせます。このとき、布の端がずれないように、まち針やクリップで数カ所をしっかりと固定することが大切です。特に滑りやすい生地の場合は、しつけ縫いをしておくとさらにきれいに仕上がります。
次に、できあがり線に沿ってミシンで縫い進めます。縫い始めと縫い終わりは、返し縫いを2~3針行うことで、糸がほつれるのを防ぎます。縫い終わったら、縫い代部分の始末をします。そのままにしておくと洗濯などで布端がほつれてしまうため、ジグザグミシンをかけたり、ロックミシンで処理したりするのが一般的です。
注意点として、生地の厚さに合わせたミシン針と糸を選ぶことが挙げられます。デニムなどの厚い生地に家庭用の細い針を使うと、針が折れる原因になります。逆に、オーガンジーのような薄い生地に太い針を使うと、生地に穴が空いて傷んでしまう可能性があります。適切な道具を選ぶことが、ミシンでの作業をスムーズにし、美しい仕上がりにつながります。
2枚の布を縫い合わせる手縫いの方法

ミシンがない場合や、ミシンを出すのが少し面倒な場合でも、手縫いで十分に美しく布を継ぎ足すことは可能です。手縫いには、ミシンにはない細やかな調整ができるというメリットもあります。
2枚の布を手縫いで縫い合わせる場合、基本となるのは「半返し縫い(はんがえしぬい)」です。半返し縫いは、なみ縫いよりも丈夫で、ミシンの直線縫いに近い強度が得られます。縫い方は、まず一針縫ったら、針目の半分だけ戻って針を出し、これを繰り返していきます。縫い目をできるだけ細かく、まっすぐに保つことが、きれいで丈夫な仕上がりにするコツです。
縫い合わせる前の準備はミシンの場合と同様で、布を中表に重ねてまち針で固定します。アイロンでできあがり線に折り目を付けておくと、それをガイドにまっすぐ縫いやすくなります。
手縫いのデメリットは、やはり時間がかかることと、縫い目の力加減を一定に保つのが難しい点です。特に長い直線を縫う場合は、途中で集中力が途切れて縫い目が乱れてしまうこともあります。疲れたら休憩を挟みながら、焦らず丁寧に縫い進めることが大切です。縫い終わった後の縫い代の始末は、ブランケットステッチや千鳥がけなどで行うと、ほつれを防ぐことができます。
布をつなぎ合わせる縫い方は手縫いでも可能か

前述の通り、布をつなぎ合わせることは手縫いでも全く問題なく可能です。むしろ、手縫いならではの利点を活かせる場面も多くあります。ミシン作業中の大きな音や振動がないため、夜間や集合住宅でも時間を気にせず作業に集中できるのは、大きなメリットと言えるでしょう。
手縫いで布をつなぎ合わせる場合、表に縫い目が目立たないように工夫することもできます。例えば、「まつり縫い」や「隠し縫い(ブラインドステッチ)」といった手法を用いれば、縫い目が表からほとんど見えないように仕上げることが可能です。これは、デザイン上、どうしても継ぎ目を目立たせたくない場合に特に有効なテクニックです。
ただし、手縫いで強度を確保するためには、やはり縫い目を細かく、丁寧に縫うことが不可欠です。また、すべての生地が手縫いに向いているわけではありません。デニムのように非常に厚くて硬い生地や、サテンのように滑りやすく繊細な生地は、手縫いで均一に縫うのが難しく、ミシンを使った方がきれいに仕上がる場合が多いです。
一方で、ダブルガーゼやコットンといった一般的な厚さの生地であれば、手縫いでも扱いやすく、楽しく作業を進めることができるでしょう。自分の技量や作りたいもの、そして作業環境に合わせて、ミシンと手縫いを柔軟に使い分けるのが賢明です。
簡単な方法で布の継ぎ足しを目立たなくするテクニック
ここでは、より具体的で簡単なテクニックに焦点を当てます。丈夫な縫い方や縫わずにできる方法、さらにはプリーツや柄物といった特定のケースでの工夫について解説します。
- 簡単で丈夫な布をつなぎ合わせる縫い方
- 簡単に2枚の布を1枚にする縫い方のコツ
- テープで簡単!布をつなぎ合わせる方法
- 簡単な工夫でプリーツの継ぎ目を目隠し
- 柄を合わせるだけで継ぎ目が目立たない
- まとめ:布の継ぎ足しを目立たなくする簡単な工夫
簡単で丈夫な布をつなぎ合わせる縫い方

初心者でも比較的簡単に挑戦でき、かつ十分な強度が得られる縫い方として「折り伏せ縫い」がおすすめです。この縫い方は、縫い代をくるむように処理するため、布端がほつれにくく、洗濯を繰り返すような衣類にも安心して使えます。
折り伏せ縫いの手順
- まず、布を中表に合わせて、できあがり線を縫います。縫い代は1.5cmほど取っておくと作業しやすいです。
- 次に、2枚ある縫い代のうち、1枚だけを5mm程度の幅になるようにカットします。
- 残した方の縫い代で、カットした縫い代を包むようにアイロンで折ります。
- 生地全体を開き、包んだ縫い代を片側に倒します。
- 最後に、倒した縫い代のキワ(端から1~2mmの部分)を縫って固定します。これで完成です。
この方法のメリットは、なんといってもその丈夫さです。Yシャツの脇の部分など、既製品にもよく使われていることからも、その信頼性がわかります。
一方で、注意点としては、縫い代を重ねて処理するため、少し厚みが出てしまうことが挙げられます。ごく薄い生地以外では、この厚みがシルエットに若干影響する可能性も考慮しておくとよいでしょう。しかし、その丈夫さと仕上がりのきれいさは、手間をかける価値のあるテクニックです。
簡単に2枚の布を1枚にする縫い方のコツ

2枚の布をつなぎ合わせる際に、できるだけ縫い目を目立たせず、まるで1枚の布のようにフラットに仕上げたい場合には「割り伏せ縫い」が適しています。この方法は、縫い代を左右に開く(割る)ことで、縫い目の部分のごろつきを最小限に抑えることができます。
割り伏せ縫いの手順
- 布を中表に合わせて、できあがり線を縫います。ここでも縫い代は1.5cmほど取っておくとよいでしょう。
- 縫い代の端を、それぞれ内側に5mm~7mmほど折り込み、アイロンでしっかりと押さえます。
- 生地全体を開き、アイロンで折った縫い代を左右にきれいに割ります。
- 最後に、左右それぞれの縫い代の折山のキワを縫って固定します。
この縫い方の最大のコツは、アイロンを丁寧に使うことです。特に、縫い代を左右に割る工程でしっかりとプレスすることで、仕上がりが格段に美しくなります。
表から見るとステッチが2本平行に入るため、デザインのアクセントとしても活かせます。厚手のウール生地でコートを作る際など、縫い目に厚みを出したくない場合に特に重宝するテクニックです。
テープで簡単!布をつなぎ合わせる方法

「ミシンも手縫いも苦手」「とにかく今すぐ手軽に済ませたい」という方には、縫わずに布を接着できるテープを使う方法が最適です。手芸店などで手に入る「布用両面接着テープ」や「裾上げテープ」がこれにあたります。
使い方は非常にシンプルです。まず、つなぎ合わせたい二枚の布の間にテープを挟みます。次に、あて布をした上からアイロンで熱を加えるだけで、テープが溶けて布同士が接着されます。これだけで、針も糸も使わずに布を継ぎ足すことが可能です。
この方法のメリットは、なんといってもその手軽さとスピード感です。裁縫道具を持っていない方でも、アイロンさえあればすぐに作業できます。
しかし、便利な反面、デメリットも理解しておく必要があります。一番の懸念点は強度です。縫い合わせるのに比べて接着力は弱く、特に頻繁に洗濯したり、力がかかったりする部分には向きません。洗濯を繰り返すうちに剥がれてきてしまう可能性もあります。また、接着した部分は布本来の風合いが失われ、少し硬くなる傾向があります。
したがって、この方法は、強度がそれほど問題にならない部分や、一時的な補修、舞台衣装の制作など、用途を限定して使うのが賢明と言えるでしょう。
簡単な工夫でプリーツの継ぎ目を目隠し

プリーツスカートなど、規則的に折り目がついているアイテムの布を継ぎ足す場合は、少しの工夫で継ぎ目を劇的に目立たなくすることができます。その簡単な工夫とは、プリーツの「山」ではなく、折りたたまれて内側に入る「奥(谷)」の部分で布を接ぐことです。
プリーツは立体的な構造になっているため、常に表に出ている山の部分で継ぎ足してしまうと、縫い目がはっきりと見えてしまいます。しかし、常に内側に隠れている奥の部分で継ぎ足せば、スカートを着用している状態では継ぎ目がほとんど見えなくなり、非常に自然な仕上がりになります。実際に、市販の制服のプリーツスカートなども、生地の幅が足りない場合はこの方法で継ぎ足されていることがよくあります。
作業のポイントは、プリーツをたたむ前に、平らな状態で布を継ぎ足しておくことです。縫い代の始末は、2枚まとめてジグザグミシンやロックミシンをかけると、厚みが抑えられてすっきりとします。
このテクニックを知っているだけで、用尺が足りずに諦めていた幅広のプリーツスカート作りにも挑戦できるようになります。
柄を合わせるだけで継ぎ目が目立たない

チェックやストライプ、花柄などの柄物の布を継ぎ足す際に、最も重要となるのが「柄合わせ」です。どんなに縫い方が上手でも、柄がずれてしまっていると、継ぎ目は悪目立ちしてしまいます。逆に言えば、柄さえぴったりと合っていれば、縫い目そのものはほとんど気にならなくなります。
柄合わせを成功させるコツは、裁断の段階にあります。まず、基準となる柄を決め、つなぎ合わせる両方の布で、その柄が縫い合わせ線でぴったりと合うように裁断します。このとき、柄のリピート(繰り返しの間隔)を考慮する必要があるため、無地の布よりも多めに生地が必要になる(用尺が増える)点には注意が必要です。
縫う際には、まち針を通常よりも細かく、柄のラインに沿って打つことで、縫っている最中のズレを防ぎます。可能であれば、しつけ縫いをしてからミシンをかけるのが最も確実な方法です。
手間はかかりますが、この柄合わせを丁寧に行うことで、継ぎ足したとは思えないほど自然で美しい仕上がりになります。お気に入りの柄の生地を扱う際は、ぜひこのポイントを意識してみてください。
まとめ:布の継ぎ足しを目立たなくする簡単な工夫
この記事では、布の継ぎ足しを目立たないように仕上げるための様々な方法をご紹介しました。最後に、重要なポイントをまとめます。
- 生地が足りない時は「継ぎ足し」という選択肢を検討する
- 継ぎ足しは手持ちの布を有効活用でき、コストや手間を省ける
- 見えない部分(裏地など)であれば気軽に継ぎ足しが可能
- 布をつなぎ合わせる縫い方には目的別に様々な種類がある
- ミシンを使えば素早く均一で丈夫な縫い目に仕上がる
- 手縫いでも半返し縫いなどを使えば十分に丈夫に縫える
- 「折り伏せ縫い」は簡単で強度が高く、初心者にもおすすめ
- 「割り伏せ縫い」は縫い目がフラットに仕上がり厚みを抑えられる
- アイロンを丁寧に使うことがきれいな仕上がりの鍵となる
- 縫うのが苦手ならアイロン接着テープが最も手軽で簡単
- 接着テープは強度が低いため、使用箇所を選ぶ必要がある
- プリーツは、表から見えない「奥(谷)」の部分で継ぐ
- 柄物の生地は、何よりも「柄合わせ」が重要
- 柄合わせをすることで継ぎ目はほとんど気にならなくなる
- 作るものや生地の種類、自分の技量に合わせて最適な方法を選ぶ